2017年5月4日 海北友松展

京都国立博物館で開催中の海北友松展に行ってきました。桃山の大絵師として名前は有名ですが、今回が初の大展覧会ということです。初期は狩野派らしく堅牢な絵画でしたが少しずつ画風が離れていき、晩年の傑作で個性が花開いて行った様子が、美しい物語のように楽しく味わえました。特に黒龍の表現の荒々しさが気骨があって、武士の気風が感じられました。

感じたこと
1 人脈の重要さ。海北友松は信長に滅ぼされた浅井家の家来の子供という、危うい立場の絵師でしたが、大名や公家などの人脈を着々と築き上げて、仕事を確立させることに成功。それが晩年の大作を描ける環境を生み出しました。人と人との繋がりの大切さをしみじみと感じました。

2 長生きするというのも画家にとって重要な点になること。絵を描き始めたのが遅かった人物でしたが、自分の画風を確立したのは60代に入ってからです。もし早死にしていたら狩野派周辺の画家としてさらっと過ぎてしまったでしょう。早逝の美学もありますが、一族が抹殺されても長く生きて描き続けるという闘いを紙上で展開した彼の人生に敬服しました。基本画家の人生や受け手の感覚を作品に当てはめてみることはご法度ですが、今回は不可抗力的にそう思わざるをえませんでした。

桃山絵画は個人的な因縁のある分野なので、展覧会のたびに特別な感覚に襲われます。やはり日本美術のひとつの到達点だといえるでしょう。