2017年5月7日 快慶展

奈良国立博物館の快慶展を観てきました。鎌倉時代を代表する仏師の快慶、整った造形とすっきりした顔立ちに写実性以上のものを窺え、深い感動を覚えました。全体だけでなく布の金工模様など細部も、ため息が出るほどの精緻さに彩られています。

 快慶は信心深くストイックに仏像を作り続けた仏師です。そして生涯をかけて自分の理想を追求していった求道者でもあります。戦乱の時代に生きる自分の全てを仏に捧げ、大いなるものを追い続ける偉大な中世人のひとりでした。

いわゆる近代、宗教の衰退と理性や平等といった近代的価値観の勃興によって、絶対的なものや崇高で神々しいものへの態度が一変します。そのようなものの追求は廃れていき、元から存在しないとまでされたりもしました。宗教は支配装置の一部であり旧時代のものという考えも生まれてきます。この流れが美術はもちろん社会全体を覆っていきました。別にそれはそれでいいと思いますし、現代の多様性の源とも受けとれます。

しかし快慶のように信仰に生き、阿弥陀といった仏の真の姿を追求し続ける、宗教的情熱から作られた数々の優作を観ると、なぜかは分かりませんが圧倒されます。大いなるものに憧れ、それを追い求めるイカロスみたいな迸る精神が伝わってきて、卑近なことであくせくしている自分の精神の小ささを思い知らされました。

少しでも大いなるものに近づこうとした昔の人の精神に、直で触れ合えたとても良い機会でした。