2017年4月4日 シャセリオー展

国立西洋美術館で催されているシャセリオー展に行ってきました。まとまった画業を窺える初の展覧会とあって中々面白かったです。アングルら精密な描写と古典的な調和を愛するグループから、ドラクロワらの情念を剥き出しにしたロマン派へと移っていく様子が、絵の進化とともに伝わってきて、青年画家が自分の道を見出していく物語を目の当たりにした気分でした。

シャセリオーという短命で知名度もあまり無い画家故か、彼の時代はどうだったのかを伝えるべくアングルの絵やドラクロワの版画などが並べられ、その時代性が一目で分かるようできています。また彼の影響下にあった画家たち(モローといった一級の芸術家)の絵も展示されています。シャセリオーという人物を多角的に捉えようとする内容となっていました。

圧巻だったのは副題の通り、異国風の作品群でした。彼の絵にアフリカの押しつぶすような光が宿り、美しい調和が生まれていました。ただし37歳の若さで亡くなり画風を確立した、というまさにこれからの段階で逝ってしまいました。そのため有名な巨匠たちのように大成された美意識によって表現された絵、というよりは模索の過程、過去や同時代からの独立のための試行といった趣を感じました。なので絵を観てもどこまでも未完な少し物足りない感覚を覚えるかもしれません。